「ChatGPTで英会話の練習ができる」と聞いて試した人の多くが、3往復で止まります。
原因は英語力ではありません。プロンプトに役割しか書いていないことです。
「英会話の先生になって」だけでは、ChatGPTは何をどこまでやればいいのか分かりません。
そこで、OpenAIが公式ドキュメントで示しているプロンプトの構成を読み直し、そのまま英会話に置き換えました。
以下、公式に書いてあることと、こちらで作った型を分けて書きます。
【結論】ChatGPT英会話のプロンプトは、この4ブロックで固定します
Identity・Instructions・Examples・Context の4つを、この順番で書きます。
これは私が考えた型ではありません。OpenAIの公式ドキュメント「Prompt engineering」が、developerメッセージに入れるべきセクションとして、この4つをこの順で挙げています(OpenAI Prompt engineering)。
公式の説明は次のとおりです。
| ブロック | 公式の説明(要旨) | 英会話に置き換えると |
|---|---|---|
| Identity | アシスタントの目的・話し方・高いレベルのゴールを書く | 誰として、どんな英語で話すか |
| Instructions | 何をするか、何を絶対にしないかのルールを書く | 訂正の出し方、話す量の配分、日本語を使う条件 |
| Examples | 想定される入力と、望ましい出力の例を見せる | 訂正フォーマットを1回だけ実演させる |
| Context | 追加の情報。プロンプトの末尾に置くのが良いことが多い | 自分のレベル、目的、期限、苦手な場面 |
理由は3つあります。
1つ目は、役割だけを書くと、訂正の形が毎回変わるからです。Instructionsで形を固定すると、復習できる出力になります。
2つ目は、例を1回見せると出力が安定するからです。公式ドキュメントは、少数の入出力例をプロンプトに入れる手法をFew-shot learningとして明記しています。
3つ目は、自分の状況を最後に置くと、会話のレベルがずれないからです。公式は、Contextを「プロンプトの終わり近くに置くのが最良であることが多い」と書いています。
ChatGPT英会話のプロンプトが効かない理由は「役割しか書いていない」ことです
うまくいかないプロンプトは、だいたい1行です。
「あなたは英会話の先生です。英語で話しかけてください。」
この1行には、4ブロックのうちIdentityしか入っていません。
結果、次の3つが起きます。
訂正が出ない、または毎回バラバラの形で出ます。 ルールを書いていないからです。
AIが話しすぎます。 話す量の配分を書いていないと、AIは丁寧に長く説明します。英会話の練習では、これは逆効果です。
難易度が合いません。 自分のレベルを渡していないので、AIは平均的な英語を出します。
つまり、足りないのは英語力ではなく指示です。
OpenAIの公式ドキュメントは、プロンプトの区切りにMarkdownの見出しやXMLタグを使うと、モデルが論理的な境界を理解しやすくなるとも書いています。参照先として挙げられているのはCommonMarkとXMLの仕様です。
見出しで区切るだけで、精度は上がります。
ChatGPT英会話プロンプトの型①|Identity(誰として話すか)
ここに書くのは3つだけです。
相手の設定(英語ネイティブの会話相手なのか、先生なのか)。
英語のレベル(ゆっくり短く話すのか、自然な速度で話すのか)。
ゴール(今日は話す量を稼ぐのか、表現を増やすのか)。
書き方の例です。
“ # Identity あなたは、日本語を母語とする学習者に慣れた英語の会話相手です。 先生ではなく、対等な会話相手として振る舞ってください。 1回の発話は2文までに収めます。 今日のゴールは、私が英語を口から出す回数を最大にすることです。 “
⛔ ここに「優しく」「楽しく」だけを書かないでください。動作が決まりません。
ChatGPT英会話プロンプトの型②|Instructions(何をして、何をしないか)
ここがいちばん大きな差になります。 公式ドキュメントも、Instructionsを「モデルが何をすべきで、何を決してすべきでないか」を書く場所と説明しています。
英会話で入れるべきルールは5つです。
1|話す量の配分を数字で決めます。 「あなたの発話は2文まで、私に必ず質問を1つ返す」と書きます。
2|訂正のタイミングを決めます。 会話の途中で毎回直されると会話が止まります。「会話中は直さない。5往復ごとにまとめて出す」が続きます。
3|訂正の形を固定します。 「私の英文/自然な英文/なぜ変えたかを1行」の3点セットに固定します。
4|日本語を使う条件を決めます。 「私が『in Japanese』と言ったときだけ日本語を使う」にします。これを書かないと、AIは親切心で日本語に寄っていきます。
5|詰まったときの助け方を決めます。 「私が10秒黙ったら、言いたそうな英文を1つだけ提示する」と書きます。
書き方の例です。
“` # Instructions
- あなたの1回の発話は英語2文までにしてください。必ず私に質問を1つ返してください。
- 会話の途中では訂正しないでください。5往復ごとに、まとめて訂正を出してください。
- 訂正は必ず次の3行の形にしてください。
– You said: (私が言った英文) – Natural: (自然な英文) – Why: (変えた理由を英語1文で)
- 日本語は、私が “in Japanese” と書いたときだけ使ってください。
- 私が言葉に詰まったら、言いたそうな英文の候補を1つだけ英語で出してください。解説はしないでください。
“`
ChatGPT英会話プロンプトの型③|Examples(訂正の出し方を1回見せる)
公式ドキュメントは、少数の例を入れて出力の形を伝える手法をFew-shot learningとして説明し、「多様な入力と望ましい出力の組み合わせを見せるとよい」としています。
英会話では、訂正フォーマットを1組だけ見せれば十分です。
“` # Examples <user_utterance> I go to Osaka last week. </user_utterance>
<assistant_correction>
- You said: I go to Osaka last week.
- Natural: I went to Osaka last week.
- Why: “last week” is a finished past time, so the verb needs the past form.
</assistant_correction> “`
これを1組入れるだけで、以後の訂正の形がぶれなくなります。
⛔ 例を5組も6組も入れないでください。プロンプトが長くなるほど、Instructionsが薄まります。
ChatGPT英会話プロンプトの型④|Context(自分の状況を最後に渡す)
公式ドキュメントは、Contextについて「モデルが回答を生成するために必要な追加情報」であり、リクエストごとに変わるためプロンプトの終わり近くに置くのが最良であることが多いと書いています。
英会話で渡すべきContextは4つです。
今のレベル(読めるが話せない、単語は出るが文にならない、など具体的に)。
目的(仕事の会議、旅行、家族との会話、面接)。
期限(3ヶ月後に出張がある、など)。
苦手な場面(電話、雑談の入り、聞き返し)。
書き方の例です。
“ # Context 私は英語を読むことはできますが、話すと単語が並ぶだけで文になりません。 3ヶ月後に、海外の取引先とオンライン会議があります。 一番苦手なのは、相手の言ったことを聞き返す場面です。 今日は、聞き返しの表現を実際の会話の中で使わせてください。 “
このブロックを毎回書き換えるだけで、同じプロンプトが別の練習になります。
そのまま使えるChatGPT英会話プロンプト5本
上の4ブロックを組み合わせた完成形です。コピーしてそのまま使えます。
1|話す量を稼ぐ(最初の1本目はこれ)
“` # Identity あなたは日本語話者に慣れた英語の会話相手です。先生ではありません。 1回の発話は英語2文まで。必ず私に質問を1つ返してください。
# Instructions
- 会話中は訂正しないでください。5往復ごとにまとめて訂正してください。
- 訂正は You said / Natural / Why の3行形式にしてください。
- 私が “in Japanese” と書いたときだけ日本語を使ってください。
- 話題は私の返答から広げてください。新しい話題を勝手に増やさないでください。
# Context 私は英語を読めますが、話すと文になりません。今日はとにかく口から出す回数を増やしたいです。 “`
2|聞き返しだけを鍛える
“` # Identity あなたは早口ぎみの英語ネイティブの同僚です。
# Instructions
- わざと1文に情報を2つ以上入れて話してください。
- 私が聞き返したら、必ず言い換えて短く言い直してください。
- 私が聞き返さずに話を進めたら、”You didn’t check.” と英語で指摘してください。
- 5往復ごとに、私が使った聞き返し表現を一覧にして、より自然な言い方を1つずつ添えてください。
# Context 私は会議で聞き取れなかったときに、聞き返せずに黙ってしまいます。ここを直したいです。 “`
3|自分の言いたいことを英語にする(瞬間英作文型)
“` # Identity あなたは英作文のコーチです。
# Instructions
- 私が日本語で1文を書きます。あなたは英訳を出さないでください。
- 代わりに、その文を英語にするためのヒントを英語で1つだけ出してください。
- 私が英語で書いたら、You said / Natural / Why の3行で直してください。
- 直した英文を使って、あなたから英語で質問を1つしてください。
# Context 私は英作文はできますが、口から出すと時間がかかります。書く速度を上げたいです。 “`
4|1つの場面を最後までやりきる(ロールプレイ型)
“` # Identity あなたはホテルのフロント係です。私は宿泊客です。
# Instructions
- 役から絶対に降りないでください。解説をしないでください。
- 1回の発話は英語2文まで。
- 私が3回連続で詰まったら、その場面で使える表現を1つだけ英語で提示してください。
- 会話が終わったら、私が使った表現の一覧と、より自然な言い方を出してください。
# Context 来月アメリカに行きます。チェックインで部屋の変更を頼む場面を練習したいです。 “`
5|今日の会話を復習用に変換する
“` # Identity あなたは私の学習記録係です。
# Instructions
- ここまでの会話から、私が実際に使った英文だけを抜き出してください。
- それぞれに、より自然な言い方を1つ添えてください。
- 私が一度も使わなかったが使えたはずの表現を、3つだけ挙げてください。
- 解説は英語1文までにしてください。
# Context 今日の会話を、明日の練習で使える形に変えたいです。 “`
5本目を必ずやってください。 会話をやりっぱなしにすると、記憶に残りません。
ChatGPT英会話のプロンプトを音声で使うときに知っておくこと
ChatGPTの公式アプリには音声で会話する機能があります。App Store日本の公式アプリ説明には「高度な音声モード – 音声アイコンをタップして、移動中でもリアルタイムで会話が可能。食事の場での議論を解決したり、新しい言語を練習したりできます。」と書かれています(ChatGPT(App Store 日本))。
音声で使うときは、Instructionsに1行足してください。
“`
- 音声で話すときは、書き言葉ではなく、実際の会話で使う話し言葉にしてください。
“`
これを入れないと、AIは文章として整った英語を読み上げてしまいます。実際の会話では、そこまで整った文は出てきません。
なお、無料枠で音声モードが1日に何回使えるかは、この記事には書きません。 公式ページを取得できず、実測できていないためです。分からないことは書かないというのが、このサイトの決まりです。
参考までに、他社は上限を公式に明記しています。Googleのヘルプは、Geminiアプリについて「コンピューティング量に基づく使用量上限が設定されています」「使用量上限は、週ごとの上限に達するまで 5 時間ごとにリセットされます」と書いています(Gemini アプリの使用量上限とアップグレード、Google Gemini(App Store 日本))。
汎用のAIチャットで英会話をするなら、上限は必ず自分で確認してください。
ChatGPT英会話のプロンプトと、英会話専用アプリの違い
ここは公平に書きます。
スピークの公式FAQは、汎用AIチャットとの違いについて「一般的なAIチャットサービスでは、何をどう練習するかを自分で考える必要があります」「スピークには英語学習のために作られたカリキュラム、レベル別レッスン、復習機能、ストリーク・リーグ・通知など、継続して上達しやすい仕組みがあります」と書いています(スピーク公式サイト)。
これは正しい指摘です。
ChatGPTのプロンプトは、カリキュラムを自分で設計する方式です。設計できる人には最速で、設計しない人には何も起きません。
発音の判定が欲しいなら、発音に特化したツールのほうが向いています。ELSA Speakは発音矯正機能を軸にしたアプリだと公式サイトに書かれています。
書いた英語の答え合わせなら、Write & Improve(University of Cambridge)が無料で使え、結果をCEFRという国際基準に紐づけて返します。
ChatGPTは万能ではありません。プロンプトで補えるのは「会話の設計」であって、「判定の精度」ではありません。
私がChatGPT英会話のプロンプトに必ず入れる1行
ここからは、私が実際にやってきたことです。
私はアメリカ・カリフォルニアに住んでいます。英語を始めたのは30歳、英検3級のところからでした。語学学校・ワーキングホリデー・アメリカの大学と、留学の3つの形を全部通りました。オーストラリアで初めて海外で働きました。
教える側もやってきました。子ども向けの英語授業、英検準1級の2次試験の解説授業、自作の発音教材、日本語講師としての指導です。
そして、AIは主要なものを8つ並行で有料契約して毎日使っています。プロンプトは、仕事でも学習でも毎日書いています。
その全部を通して、私が必ず入れる1行があります。
“`
- 私が沈黙しても、あなたから話題を変えないでください。待ってください。
“`
理由は、教えていて毎回同じ場面を見てきたからです。
日本人学習者がいちばん英語を落とすのは、間違えたときではありません。黙ったときです。
黙った瞬間に相手が話題を変えると、その人は「自分は答えられなかった」という記憶だけを持ち帰ります。
対面のレッスンでは、講師は沈黙を埋めてしまいます。良かれと思ってやります。
AIも同じで、放っておくと沈黙を埋めます。だから、待たせる指示を書きます。
私自身、現地のマクドナルドで注文が通らずに固まったことがあります。銀行に英語でクレームを入れて交渉したこともあります。あのとき、相手は待ってくれませんでした。
だから練習では、待ってもらいます。待ってもらえる練習ができるのは、AI相手だけです。
これがAIを使う最大の理由だと、私は思っています。
ChatGPT英会話のプロンプトについてよくある質問
Q. ChatGPT英会話のプロンプトは英語で書くべきですか、日本語で書くべきですか。
A. 日本語で構いません。指示の言語と、会話の言語は別です。Instructionsに「会話は英語で」と書けば会話は英語になります。
Q. プロンプトはどのくらいの長さがいいですか。
A. 4ブロックで20行前後に収まります。長くすると、Instructionsの効き目が薄くなります。
Q. 毎回このプロンプトを貼り直すのですか。
A. 貼り直すのはContextだけで足ります。Identity・Instructions・Examplesは同じものを使い回してください。
Q. 訂正が細かすぎて会話が止まります。
A. Instructionsの「5往復ごと」を「10往復ごと」に変えてください。回数で調整できるように書いてあります。
Q. ChatGPT英会話のプロンプトで、レベルを指定するにはどう書きますか。
A. 「初級」ではなく動作で書いてください。「1文は10語以内」「関係代名詞を使わない」のように書くと安定します。
Q. 発音は直してもらえますか。
A. テキストのやり取りでは直せません。音声モードでも、公式は発音判定の機能を明示していません。発音は専用ツールを使ってください。
Q. 「fluent(流暢)になれますか」と聞かれたら、どう答えますか。
A. ケンブリッジ英語辞典は fluent を「その言語を非常によく、簡単に、素早く話せる」という趣旨で定義しています(Cambridge Dictionary: fluent)。プロンプトで作れるのは「話す回数」であって、流暢さそのものではありません。回数が先で、流暢さは結果です。
まとめ|ChatGPT英会話のプロンプトは、役割ではなくルールで決まります
Identity・Instructions・Examples・Context の4ブロックで固定してください。
一番効くのはInstructionsです。話す量、訂正のタイミング、訂正の形、日本語を使う条件、詰まったときの助け方。この5つを数字と形で書きます。
そして、沈黙を埋めさせない1行を必ず入れてください。
これだけで、3往復で終わっていた練習が、20往復続くようになります。
この記事の情報の取り方
- プロンプトの4ブロック構成・Few-shot・Contextの配置は、OpenAIの公式ドキュメント「Prompt engineering」を2026年9月8日に読んで確認したものです。
- ChatGPTアプリの音声モードの記述は、App Store日本の公式アプリ説明からの引用です。
- 無料枠の回数制限は、公式ページを取得できなかったため書いていません。
- 掲載しているプロンプトは、この記事のために書き下ろしたものです。
- 個人の口コミ・レビュー本文は一切引用していません。
Comments