シャドーイングを1人で100回やっても、上達の実感が出ない人がいます。
原因は、練習量ではありません。
自分の音を、自分で採点できていないことです。
ここだけをAIで埋めると、シャドーイングは別の練習になります。
この記事では、1回15分の手順を分単位で決めて、AIに投げる指示文まで置きます。
やり方を1本に絞ります。選択肢は並べません。
【結論】シャドーイングにAIを入れる意味は、採点者を作る1点だけです
シャドーイングにAIを足す目的は、自分の録音を採点してくれる相手を作ることです。それ以外の目的では足さなくてよい、と考えています。
理由は3つあります。
1つ目は、シャドーイングの失敗がほぼ全部「自分ではできているつもり」から来ることです。
2つ目は、音声を渡せるAIなら、聞こえたとおりに文字にして返してくれることです。
3つ目は、直す対象が3つに絞られれば、次の15分の中身が決まることです。
逆に、素材選びや発音のお手本探しは、AIの仕事ではありません。
音のお手本は、辞書と公共放送の教材のほうが確実です。
シャドーイングが1人だと崩れるのは、AI以前に「自分の音が聞こえない」からです
自分の声は、出したつもりの音と混ざって耳に届きます。
だから、口で言えているつもりのものが、録音では別の音になります。
私が生徒のシャドーイングを聞いていて、毎回ぶつかる崩れ方は3つです。
- 合わせているつもりでズレる:声は出ているのに、音声より半拍遅れて追いかけている
- 崩れる場所に気づかない:文の後半の2語だけ毎回消えているのに、本人は最後まで言えたと思っている
- 直す対象が決まらない:「発音を良くする」という大きさの目標なので、翌日も同じ練習に戻る
この3つは、指摘されれば全部その日に直せます。
つまり足りないのは能力ではなく、指摘する人です。
そこにAIを置く、という話です。
シャドーイングとAIを組み合わせた1回15分の手順(分単位の表)
毎回この順番で回します。時間を延ばすより、順番を崩さないほうが差になります。
| 時間 | やること | 手を止める合図 |
|---|---|---|
| 0:00〜0:30 | 素材を開く。30〜60秒だけ切り出して範囲を決める | 範囲が決まったら即終わり |
| 0:30〜2:30 | スクリプトを見ずに2回聞く。意味を取る | 2回で切る。分からない語は放置 |
| 2:30〜4:00 | スクリプトを読む。知らない語と、切れ目に印を付ける | 印は1文に2個まで |
| 4:00〜5:30 | マンブリング。口を閉じ気味に、音だけを真似る | 3回。意味は考えない |
| 5:30〜9:00 | シャドーイング。スクリプトを見て5回、見ないで3回 | 詰まっても止めずに最後まで |
| 9:00〜10:00 | スマホで1回だけ録音する | 録り直さない。1本目を使う |
| 10:00〜13:00 | 録音をAIに渡して、下の指示文で採点させる | 3つに絞らせるまでやる |
| 13:00〜15:00 | 指摘された3つだけを意識して、もう1回録音する | 1本目と聞き比べて終了 |
最後の2分を飛ばすと、この練習は成立しません。
指摘を受けて直した音を、その場で1回だけ出す。これが練習の本体です。
マンブリングを飛ばす人がいちばん多い
マンブリングは、口をあまり開けずに音の流れだけを真似る段階です。
ここを飛ばすと、単語をはっきり言おうとして、リズムが平らになります。
1分半でいいので、必ず入れてください。
シャドーイングをAIに添削させる指示文(プロンプト)3本
そのままコピーして使えます。1本目から順番に投げてください。
順番を入れ替えると、AIの回答が一般論に寄ります。
1本目:発音の癖を指摘させる
あなたは英語の発音指導の専門家です。
渡す音声は、私が英語のスクリプトをシャドーイングした録音です。
次の順番で、日本語で答えてください。
1. 聞こえたとおりに、私の発音を英語で書き起こす
2. 手本と違って聞こえた語を、最大10個まで箇条書きにする
3. それぞれの原因を「子音・母音・強勢・リズム・連結」のどれかに分類する
4. 私に共通している癖を3つだけ挙げる
条件
・褒め言葉は書かない
・直し方の説明は、この回答には書かない
・聞き取れなかった箇所は「聞き取れない」と書く
「聞き取れない」と書かせるのが肝です。
聞き取れない箇所こそ、相手にも通じていない箇所だからです。
2本目:スクリプトとの差分を出させる
これから2つのテキストを渡します。
1つ目は手本のスクリプト、2つ目は私の録音の書き起こしです。
次の4点を、日本語で答えてください。
1. 抜け落ちた語(私が言えていない語)を全部
2. 増えた語(私が足してしまった語)を全部
3. 入れ替わった語(別の語に聞こえた語)を全部
4. 抜け落ちが集まっている位置や品詞を1行で
条件
・数を省略せず、全部出す
・良かった点は書かない
手本のスクリプト:
(このあとに貼り付けます)
私の録音の書き起こし:
(このあとに貼り付けます)
抜け落ちた語は、たいてい機能語と語末の子音に集まります。
そこが見えるだけで、翌日の練習が変わります。
3本目:次に練習する音を3つに絞らせる
ここまでの指摘を、明日から練習する項目3つに絞ってください。
条件は次のとおりです。
・1項目は「1つの音」か「1つの型」にする
・3項目とも、15分の練習で試せる大きさにする
・それぞれに、練習用の短い英文を1文ずつ付ける
・優先順位の理由を「相手に通じるかどうか」で1行ずつ書く
優先順位をつけた表で、日本語で答えてください。
3つより多い指摘は、次の日に1つも残りません。
絞らせるところまでが、AIに任せる仕事です。
なお、使うAIは音声ファイルを受け取れるものであれば形は問いません。
受け取れない場合は、自分で録音を聞いて書き起こし、2本目の指示文から始めます。
自分で書き起こす手間は、実は採点の精度をいちばん上げます。
シャドーイングとAIで最初に潰す音は6つです
日本語を母語にする人がシャドーイングで崩れる場所は、ほぼこの6つに収まります。
| 潰れる音・型 | 口の中で起きていること | 録音に出る症状 | AIへの聞き方 |
|---|---|---|---|
| /l/ と /r/ | どちらも日本語のラ行に寄る | light と right が同じに聞こえる | 「l と r の混同があった語を全部挙げて」 |
| th の音(/θ/・/ð/) | 舌を歯に当てず、サ行・ザ行で代用する | think が sink に聞こえる | 「th を別の子音で出していた語は」 |
| /æ/ | ア・エの中間の口を作らない | bad が bed か bud に寄る | 「母音の取り違えを語ごとに」 |
| 語末の子音 | 子音のあとに母音を足してしまう | book が2音節に伸びる | 「語末に余分な母音が付いた語は」 |
| 連結・脱落 | 語をひとつずつ区切って出す | 速さに追いつけず語尾が消える | 「つなげて読むべき箇所を挙げて」 |
| 強勢とリズム | 全部を同じ強さで平らに読む | 語は合っているのに聞き返される | 「強く出すべき語を各文1〜2語だけ」 |
6つを一度に直そうとすると、どれも残りません。
順番を付けるなら、私は強勢とリズムを先に置きます。
ここが直ると、個々の子音が甘くても通じ方が変わるからです。
音のお手本は無料で確認できる
ケンブリッジ英語辞典の単語ページには、イギリス英語とアメリカ英語の音声が別々に置かれています。
2026年9月12日に単語ページの中身を確認したところ、UK用とUS用で別の音声ファイルが指定されていました。
つまり、どちらの音を真似るのか自分で選べます。
連結や脱落の型を動画で確認したいなら、BBC Learning English のPronunciationのページがまとまっています。
同ページには子音と母音の音を1つずつ扱う The Sounds of English と、Tim’s Pronunciation Workshop が並んでいます(2026年9月12日に確認)。
同化・脱落・リンキングが1本ずつ独立した回になっているので、AIの指摘語をそのまま探せます。
シャドーイングの素材選びは、AIに投げる前に数字で決めます
素材が合っていないと、AIの指摘が毎回バラバラになります。
私が生徒に渡すときの基準は、数字で決めています。
| 項目 | 基準 | 外れたときに起きること |
|---|---|---|
| 1回で使う長さ | 30〜60秒に切る | 長いと録音が採点に向かず、指摘が散る |
| 速さ | ゆっくり読まれた教材から始める | 速すぎると口が止まり、マンブリングに戻れない |
| 知らない語 | 10語に1語以下 | 語の意味を思い出す処理に時間を取られる |
| スクリプト | 必ず付いているものだけ | 差分が取れず、2本目の指示文が使えない |
| 話者の数 | 最初は1人か2人まで | 話者が増えると、誰の音を真似るのかが崩れる |
| 同じ素材を使う回数 | 3日連続で同じ30秒 | 毎日変えると、直った実感が測れない |
速さの基準で迷ったら、教材側が「ゆっくり読んでいる」と書いているものを選びます。
VOA Learning English は、自分たちの番組についてこう書いています。
The programs are read one-third slower than normal English speed.
VOA Learning English「About Learning English」より(2026年9月12日に確認)
同じページには、語彙を上級入門から中級の範囲で書いているという説明も並んでいます。
通常の速さより3分の1遅い、と自分で書いている教材は、最初の素材として扱いやすいです。
長さの基準では、BBC Learning English の6 Minute English が便利です。
ページ上で中級レベルと書かれており、1本が6分で、重要語の解説も付いています(2026年9月12日に確認)。
スクリプトは「音と同じ」とは限らない
ここは見落とすと、AIの差分採点が意味を失います。
6 Minute English の各回のページには、書き起こしの前に注意書きが載っています。
Note: This is not a word-for-word transcript
BBC Learning English「6 Minute English」の回ページより(2026年9月12日に確認)
つまり、音声と1語ずつ一致しているとは限らないという断り書きです。
なので、AIが「抜け落ち」と言った語は、まず音声を聞き直して確認します。
自分が言えていないのか、スクリプト側が違うのか、2択で切り分けます。
指導していて分かった、シャドーイングにAIを足しても動かないもの
ここからは、私が生徒の音を聞いてきて分かったことを書きます。
シャドーイングを聞いていると、崩れる場所は人ごとにほぼ固定されています。
ある人は毎回、文の最後の2語が消えます。
別の人は、and と of と to がいつも同じ強さで出てきます。
面白いのは、その1か所だけを直すと、周りの音まで揃って聞こえることです。
逆に、いろいろ直そうとした回は、前より聞き取りにくくなります。
だから私は、1回の練習で直す対象を3つより増やしません。
海外で通じなかったのは、発音の細かさではなかった
海外で働いていたとき、空港のカウンターで行き先が通じませんでした。
地名を3回言い直し、最後は紙に書いて見せました。
通じなかった理由は、後になって分かりました。強く出す位置が違っていたからです。
母音も子音も間違っていないのに、強勢の山が別の場所にありました。
相手は違う単語として受け取っていたわけです。
この経験があるので、AIの指摘も強勢とリズムから拾わせます。
個々の子音の細かさは、そのあとで足りるからです。
シャドーイングでAIを使うときに、やってはいけない4つ
やり方を足す前に、外すものを外したほうが速いです。
- 3分以上の録音を丸ごと投げる:指摘が総評になり、直す場所が消えます。30〜60秒で切ります
- 毎日違う素材にする:直ったかどうかを測る物差しが無くなります。同じ30秒を3日使います
- 褒め言葉を成果とみなす:AIは頼めば褒めます。指示文で褒め言葉を止めます
- 書き起こしを見て満足する:直した音をその場で出し直さないと、練習になりません
4つ目がいちばん多い落とし穴です。
採点を読む時間と、直して出す時間は、同じだけ取ってください。
シャドーイングとAIを組み合わせた2週間の進め方
最初の2週間は、素材を増やさずに回数だけ積みます。
| 日 | 素材 | その日の狙い | AIに出させるもの |
|---|---|---|---|
| 1〜3日目 | 素材A(30秒) | 手順を体に入れる | 癖3つ(1本目の指示文) |
| 4日目 | 素材A | 1日目の録音と聞き比べる | 差分(2本目の指示文) |
| 5〜7日目 | 素材B(30秒) | 強勢とリズムだけを見る | 強く出す語を各文1〜2語 |
| 8日目 | 素材A・B | 直った項目を確定する | 1日目との違いを3点 |
| 9〜11日目 | 素材C(45秒) | 連結と脱落に入る | つなげて読む箇所の一覧 |
| 12〜13日目 | 素材C | スクリプトを見ずに通す | 抜け落ちた語の全部出し |
| 14日目 | 素材A | 最初の素材に戻って録音 | 2週間での変化を3点 |
14日目に1日目の録音と並べて聞く。これが唯一の成果確認です。
録音を消さずに残しておいてください。
シャドーイングとAIについてよくある質問
Q. シャドーイングにAIを使えば、発音はきれいになりますか。
A. きれいになると言い切ることはできません。
ただし、直す場所が毎回1枚の紙に出てくる状態は作れます。
私の経験では、強勢の位置が揃うと、聞き返される回数から先に変わります。
Q. 1日15分で足りますか。
A. 15分を毎日のほうが、60分を週1回より噛み合います。
理由は、同じ30秒を3日続けて録音しないと、変化が測れないからです。
Q. スクリプトを見ながらやってもいいですか。
A. 最初の5回は見て構いません。
見ないで通す回を最後に3回入れれば、目的は足ります。
録音は、見ないで通した状態で取ります。
Q. AIに音声を渡せないときは、どうしますか。
A. 自分の録音を自分で書き起こして、2本目の指示文から始めます。
聞こえたとおりに書くのがコツで、言ったつもりの語は書きません。
Q. どのAIを使えばいいですか。
A. この記事では特定のサービス名で指定しません。
音声機能の仕様や無料の範囲は変わるため、使う前に提供元のページで確認してください。
条件は1つだけです。音声か書き起こしを受け取って、日本語で指摘を返せることです。
Q. 発音記号は覚えたほうがいいですか。
A. 全部は要りません。
AIが指摘してきた音だけ、辞書の音声で確認すれば足ります。
Q. AIの指摘が毎回違うときは、どうしますか。
A. 素材と長さを固定していない可能性が高いです。
同じ30秒・同じ指示文で3日投げると、繰り返し出てくる指摘が残ります。
その残ったものが、あなたの癖です。
まとめ|シャドーイングにAIを足すのは、採点者を置くためです
シャドーイングにAIを入れる意味は、自分の録音を採点してくれる相手を作る1点です。
やることは3つに絞れます。
- 30〜60秒に切った素材で、15分の手順を順番どおりに回す
- 録音を渡して、3本の指示文で癖・差分・次の3項目を出させる
- 指摘された3つだけを直して、その場でもう1回録る
最初に見るのは、強勢とリズムです。
個々の子音より先に、通じ方が動く場所だからです。
この記事の情報の取り方
- 教材の速さ・レベル・書き起こしの注意書きは、2026年9月12日に各ページの中身を直接取って確認しました
- 引用した英文は、確認した時点のページに載っていた文をそのまま載せています
- シャドーイングの効果を数字で示す研究の引用は、一次資料を自分で確認できたものが無かったため載せていません
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